Wednesday 28 March 2012

フリーの経済

近年グーグル、Facebook、Twitterに代表されるように無料でサービスを提供して大きな収益をあげている会社が目につきます。確かに広告収入などで稼げるということは分かるのですが、感覚として10GBに近いメール容量を無料で使えるとか、質の高いソーシャルネットワーキングサービスを使えるということに釈然としていませんでした。しかし一面でこの無料という形態はデジタル・インターネットの市場では避けられないという感覚があります。職業柄オープンソースのWordpressコミュニティーに参加した経験もあり、主催者たちに話を聞くと人によっては商売は意識していないという人もいます。このようなイベントは私の感覚では話をすることによってWordpressの知識があることを聴衆に宣伝している面が大きいと思うのですが…。結論としては、収入モデルを立てて5%の支払う意思のあるユーザからの収入で商売を成り立たせる計算・計画を明確に立てるというビジネスの基本を忠実に実行しているだけということでしょう。

先日書店で半分偶然・半分任意にChris Anderson著「Free」の日本語訳を見つて読んだので私なりの理解を書きます。上の私の釈然としない状態にフリーの経済の例をいくつか提供してくれることが一番納得することのできた点だと思います。無料で試供品を提供したり、おまけをつけたりするのは昔からある広く使われている手法ですが、今回は私の興味が主にインターネット上のマーケティングであることから、デジタルの世界に注目します。

無料の経済というのは、基本として5%の有料ユーザが95%の無料ユーザを支えるという状態です。まず商品は知られていなければ購入につながらないため、できるだけ多くの人に知ってもらう状態を作り出す。そのために、デジタルの世界では大勢の人に情報を届けると一人あたりのコストが限りなくゼロに近づく、そして1円でも聴衆することと0円にすることの間で生じる心理的影響を考慮してフリーにするという選択肢をとるということが背景です。

フリー経済のカテゴリーとしていくつか著者があげているので下に記します。

  1. 直接内部相互補助 --> 一つ買うと一つ無料でサービスという形態や、バジェット航空会社のように座席を売るという商売モデルから飲食、荷物、その他サービスに課金する方法をとるモデルもある。
  2. 三者間市場 --> Google Appsのユーザは無料でサービスを使用できるが、Googleは広告料を支払う業者たちからの収入で収益をあげるなどのビジネスモデル。オープンソース経済もこれに含まれるか。
  3. フリーミアム --> EvernoteやDropBoxのように一定の使用容量までは無料でそれ以上の保存容量を必要とするユーザに課金する仕組み
  4. 非貨幣経済 --> 貨幣以外の価値観を大切にして活動する経済

ただこれはスケールの問題もあり、例えばブログの著者は非貨幣経済で良い情報を読者に提供しようとしている人たちもいます。これをもう少し上の視線で見れば、例えばブログのプラットフォームを提供しているアメーバのユーザになるということでアメーバの収入に寄与している、またはWordpressを設置するために使用しているサーバ提供会社に料金を支払っているということが言えます。

事例としては下のようなものが挙げられていました。

直接内部相互補助

  • イスラエル、オーストラリア、デンマークなどガソリンに対する税金が高い国で電気自動車を無料で配る --> 走行距離で課金

三者間市場

  • 無料のウェブアプリケーションを提供する --> 広告らら収益をあげる(Google, Facebookなど)
  • 医療ソフトをただで病院に配布 --> ユーザがソフトを利用して入力したデータを販売
  • Googleによる無料電話番号案内 --> 音声の認識パターンデータをためて、将来に活用する

フリーミアム

  • 株式売買手数料を無料に --> 月4回目の取引から課金、資金を運用
  • 大学の授業を無料でインターネットで放送 --> 大学で授業を受ける学生から収益を挙げる。大学で授業を受ける価値は学生の人脈をつけるなど、授業を受けるだけではない。
  • CDやインターネットで音楽を無料(無料に近い料金)で配布 --> ライブチケットなどの収益減を確保

中国やその他発展途上国では明らかに大多数が先進国並みの価格で音楽CDや高価なソフトウェアを購入できないため、海賊版が広く出回っているという事情の地域もあります。これらの地域では企業側も海賊版の存在を許容し、本物のブランドバッグの質を求める人は本物を購入する、または会社に就職した後にマイクロソフトWindowsやOSに依存したソフトを料金を払って利用するという市場に託しているという事情もあります。

無料にしないほうが良いものも多くあります。情報を提供するだけでも、有料である方が価値観を感じる情報もあります。また価格を高くして会員になるハードルを高くもうけることで質の高い会員を集めている(と自負している)会員制サイトもあります。

フリーの経済という概念は私は有用な概念だと思うので、これから活用していきたいと思ういます。

弱く関連した項目ですが、最近はスマートフォン+ソーシャルという市場が大きく注目を浴び、また成長しています。日本の女性は昔から携帯電話のメールやインターネットを活用してきましたし、現在も家庭にパソコンを持たない代わりにスマートフォンを使用してメールやインターネットなどこなしているようです。女性の感覚を理解するのは難しいですが、スマートフォンとソーシャルの市場を理解・予測するには女性の行動を理解するのが最短であるような気がします。例えば男性の感覚でスマートフォンをパソコンの代替となるよう、いろいろ複雑な機能を追加していくという方向で投資を進めるのではなく、いかにそんな端末があることを意識しないで必要なことができるようになるかという思考が一つのキーだと思いますが…これは別の話題ですね。

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